プルルルル・・

電車が発車しますお乗りで無い方は白線の内側までお下がり下さい

尚、駆け込み乗車は危険ですのでおやめ下さい

ドアが閉まりますご注意ください

この電車は終点○○まで10つの駅に止まります



ふっと思いだす日常の言葉達電車通学の私にとって耳に残る言葉達

いつもと同じ無表情で・・何も無い考えもしない頭でただボーッとまるで周りに人が居ないように過ごした日々

灰色の世界で何も考えることなくただ死んだような目であるく人達のなかの1人として・・

そう考えていると今の生活がなくなってしまうのが怖くなる




貴方を失ってしまうのが・・・物凄く怖くなる









さん??・・どうしたんです??今日は随分と甘えたさんですね・・子供に笑われてしまいますよ??」

「・・・・・今日は・・ちょっとだけ・・」

「・・そうですね・・久しぶりに貴方から抱きついてくれたんですから・・」

「・・暖かい・・でも寒い」

「え??」

「私が冷たすぎて・・弁慶が暖かすぎる・・ううん・・私が冷たすぎるだけか??」



顔をうずめたまま喋る私の言葉を弁慶はただじっと聞いていた

向こうの世界が嫌なわけじゃない

でも私は・・怖いんだ・・今の生活がなくなってしまうのが・・

あまりに今が暖かくて優しくて心地よくて・・冷たい世界で生きてきた私には・・暖かすぎて

だからいつも心のどこかに不安がある・・願いがある・・恐怖がある・・


いつかは・・何処かへ行ってしまうのではないかと・・・




「母様―・・あれ??母様どうかしたの??」

「今日はお母さんのお疲れ日なんですよ・・柚子」

「母様なんで疲れてるの??」

「うーん・・そこまではお父さんにも解りませんね」

「えぇ!?・・父様にも解らないの・・あ・・母様・・どうしたの??柚子のせいで泣いてるの?」




顔をうずめている私に柚子が悲しそうに不安そうに声をかけ

同じ色の髪をゆっくり撫でる

いい子いい子のつもりなのだろう・・小さな手が心地よい私はゆっくり強く握っていた弁慶の着物を離して

涙の溜まった目で柚子を見た

柚子はビックリしたように焦ったように私を見る



「どどど・・どうしよう父様?!母様泣いちゃってる?!」

「・・・んーん・・何でもないの柚子・・何でもないから安心して」

「母様・・誰かに虐められたの??」

「ううん・・違う・・ただちょっと寂しくなっちゃったのかな・・??」



泣き腫らした目ですっと笑顔を作る

寂しくなったというか・・悲しくなったというか・・いつか1人にされるんじゃないかって・・

不安で溜まらなくなったんだ・・

私だけ・・ココの世界の人間ではないから・・



「柚子お母さんを少し寝かせますから・・外で遊んできてもらえますか??」

「そうすれば・・またいつもの母様に戻る??」

「僕が戻してみせますよ・・さっ九朗のところにでも遊びに行ってきなさい」

「うんっ約束だよ父様!!」



そう言って部屋を出て行く柚子の背中を少し見つめる

気をつかせてしまったんだろうか・・私は母親失格かもしれない・・

そう思いながらため息を吐いた


ぐいっ

その時手を捕まれ布団に押し倒された



「・・べ・・弁慶っっ」

「そんな・・悲しそうな顔をしないでください・・不安になるじゃないですか・・」

「え??・・」

「君がいつかあっちの世界に帰ってしまうんじゃないかって・・僕を置いていってしまうんじゃないかって」

「そんな事・・んッ!!・・ふッ・・やッ」



言いかけの所で口を塞がれた

口の中に舌が入ってくるのが解る・・自由をなくした手が頭の上で縫いつけられる



「・・君を失って悲しむのは柚子だけじゃない・・僕だって柚子以上に悲しみます」

「・・・・違う・・違うんだっ・・」

「え??・・」

「私が言ってのは・・いつか弁慶も柚子も・・みんな私の前から居なくなっちゃうんじゃないかって思ってっ・・」

「・・・・・??」

「だって・・私だけ違う次元の人間で・・だからっ・・私だけ置いてかれてしまうんじゃないかってッッ」



その言葉を聞いてすっと笑って私のオデコに自分のオデコをくっつけてくる弁慶

綺麗な顔が目の前にあって思わず赤面してしまう

安心したように笑いかけてくる弁慶



「良かった・・君が・・向こうの世界に帰ってしまうんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてたんです」

「そんな事っ?!・・」

「もういいんですよ・・君はやっぱり僕の愛した人だ」

「なッ・・お前そんな平然と凄いこと言うなよ?!」

「本当の事ですよ・・やはり君を妻として向かえて良かった」



そう言って首に唇を近づけちゅっと音を立ててキスをする

恥ずかしくなってさっきよりも顔を赤らめる私をクスクス面白そうに見る弁慶



「ふっ・・ばっやめろっ」

「もう止まりませんよ」

「・・止めろバカッ!!・・ひゃっ・・んー・・」


「大丈夫・・君が離れろと言っても絶対に離れませんから・・ずっと隣で手を引き続けますよ・・だから安心して」

「・・・うん・・」

「ずっと隣に居ます・・約束しますだからもう・・そんな悲しそうな顔をしないでください・・」

「・・弁慶・・」

「僕は君のどんな表情も大好きで大切ですが・・・笑顔が1番僕にとっての1番なんですから」



そう言ってもう1度軽くキスをする

優しく微笑んで手を解放する

そのままゆっくり起き上がる弁慶を追って私も起き上がる



「だから・・もう消えてしまいそうなんて言わないで下さい」

「うん・・約束する・・それに・・」

「それに??」

「私も弁慶の笑った顔は大好きだ・・しな」



そう言って弁慶の肩に手を置いてぎゅっと目を瞑り

小さく唇にキスをする・・短時間の短い触れだけのキス

それだけで赤面してしまう私

驚いたように私を見て・・すっと微笑む弁慶



「本当に君はいけない人ですね・・そんなに僕の理性をなくしたいですか??」

「え゛・・あ・・いやそんなつもりは・・」

「もう後の祭りですよ・・・柚子が帰ってくる前に終わらせるよう努力しますね」

「やっ待てっ・・何押し倒してんだ!!おい!!」

「そういえば柚子が言ってましたよ??・・今度は男の子がいいって!!」

「わっ!!バカ・・なに今からすることを解らせるかのように暴露してんだよ?!」

「さぁさぁ・・時間が余りないので・・」

「わぁー!!!帯に手をかけるなぁ!!!!」





終点駅で・・貴方が待っていると信じてるから

だから待っていてください

そう囁いて微かに微笑んだ