ただ悲しくて

今・・・雨が降ればいい・・そう思った





「・・・・ヒノエくん・・」



今きっと情けない顔してるんだろうな・・きっと・・きっと・・・

貴方を困らせてしまいそうな顔・・してるんだろうな



「ずっとそこに居る気かい姫君??いくら話し掛けたって死人は答えないだろ・・」

「・・・別に話し掛けてる訳じゃないって!!それは怪しいでしょぉいくらなんでも!!」

「・・・・・・」

「・・そう・・なんだよね・・もう笑ってくれないんだよ・・ね」



海岸にめんした場所

白い石版の前に名前が刻まれ・・置かれた花束が綺麗に風に揺れている

綺麗な青が何所までも・・空と交わることなく続いている



「・・・憎いと思うかい??」

「ううん・・憎しみと復讐に生きるなんてこっちから願い下げだよ」

「・・・そう」

「でもさ・・」

「でも・・・なんだい??」



ジーっと石版を見つめる

憎しみとか・・復讐とか・・そんなのただ汚いだけ

空をふっと見上げる・・ヒノエくんは私をただジッと見つめる



「空が・・少しだけ憎いか・・な」

「・・空??」

「そう・・この透き通った青い空」



頬を・・小さな透明な滴が伝う

ヒノエくんは少し驚いた後・・悲しそうな切ない顔で私に視線を寄せる

手で目を覆い・・少しかすれた声を出す



「・・こんな時だけ・・さ・・こんな綺麗に晴れちゃって・・さ」

「うん・・」

「こんなの・・あんまり・・だ・・よ」

「うん・・」

「・・ずるい・・ずるい・・よ・・」

「うん・・」


「・・・こんなんじゃ・・泣いてるの・・ばれちゃ・・うじゃん」



口元がひくつく

声がもれる・・奥歯をかみ締めて声を耐えようとする

ヒノエくんがやっと歩き出し・・私の頭を抱え・・自分の胸に押し付けた

大きな胸にすっぽりはまってしまう私の体



「・・俺が・・・お前を隠すから・・泣きなよ



「・・・うっ・・・・ああああああああああ」



ヒノエくんの着物を握り締め・・押し殺していた声が一気に漏れた

ぎゅっと握り締めている着物・・悲しくて悔しくて・・そんな思いが全部広がる

私の肩を大きな腕で覆う・・



「・・どうしてっっ・・うっ・・どうしてっ・・」

「解ってる・・解ってるよ・・だから思いっきり泣けばいいよ」

「・・・・・ひっうあぁぁぁぁ」


「ずっと握っててやるから・・俺に全部ぶつければいい・・」



ただ・・真っ白になるまでこみ上げる涙を搾り出した

雨の降らない大きな空が・・もしかしたら・・・怖かったのかもしれない

こみ上げる切ない言葉が私を覆っていく・・



「大丈夫・・俺は消えないよ姫君」