ぐっすり寝た後に・・


「おはよう」って声をかけてくれる人が欲しかった


ただそれだけの願いも神様は見てみぬふり神様は私を嫌っているらしい


そう思ってからあんまり笑わなくなった


笑ったって同じ・・笑わなくたって同じ・・だってもう涙はかれて出てこなくなってしまったから











嗚呼 回る
世界で泳ぐように










モゾモゾ・・

布団の中から顔を出すと障子の間からお日様が差し込んでいた

そうか私・・熊野のヒノエくんのお屋敷に来ているんだっけ・・



「んー・・・起きよう」



部屋から出て右左を見回す

長い長い縁側が続いていて綺麗にされている庭がどこまでも続いていた

困ったなぁと思いながら開けた障子を閉める

いつのまにかモコナの姿も見えない・・きっとこのお屋敷を探検しにいったのだろう



「困ったな・・お部屋に居た方がいいのかな・・・」


「おはよう姫君」



ビクッと身体を震わせ後ろを見るとヒノエくんがニッコリ笑っていた

・・おはよう・・初めて他人から言われた・・父さんは家に居ないし母さんは私を見ないふりしているし

だからそう言って笑顔をくれる人なんていなかったから私には・・新鮮で

ボーッとしている私をヒノエくんはん??という顔で見ている

あ・・と声を漏らし顔が少し赤くなっているのを着物の裾で隠しながら



「・・お・・おはようっ・・」



そう言えた

少し大きな声を出したから驚いたらしいがまたいつものポーカフェイスで笑顔を作った



「起きるの遅いんだねあまりに遅いから起こしに来たんだぜ??」

「あ・・うん・・ちょっと疲れてて・・ゴメンなさい」

「誤る必要なんてないさ・・さっ朝飯食べるだろ??」

「え・・あっうん頂きます」

「何で敬語なんだい??・・朝から面白いね」



ヒノエくんは私を見るとすぐ笑う

そんなに変なコトでも言ったのだろうか??と思いながら

私もヒノエくんの後について行く・・大きなお部屋に入るとヒノエくんはげェって顔をした

私はヒノエくんの後ろからヒョッコリ除くとモコナとヒノエくんにそっくりの男の人が一緒にお酒を飲んでいる



「クソ親父てめェ何してやがるっっ」

「おぉいやなコイツがあんまりのいい飲みっぷりでよぉ」

『湛快も負けじといい飲みっぷりぃ』

「モコナ・・お酒飲めたんだね」

『うんっモコナ結構いける口なんだよぉ』

「おっアンタが異世界から来た姫さんかい??」

「あ・・はいっ初めましてっ」



ハッハハハハと笑いながら私のほうへ近寄ってくる男の人

でもヒノエくんがバッと私の前に出て睨む

血管が浮き上がっているなんだか物凄く不機嫌のようだ



「おりゃぁ藤原湛快よろしくな」

「あぁはい・・ってえぇ藤原って・・あっ初めましてっっ」

その“初めまして”二回目だぜ??」

「はっははははやっぱり面白い姫さんじゃねぇかお前が気に入ったのも解る気がするな」

「あっあの私といいますっお世話になっておりますです」

混乱しすぎー敬語がゴッチャになっちゃってるー』

「ますます気に入ったぜまぁ姫さんよぉゆっくりしてってくれやココを家だと思ってさ」



・・・家っか・・

嬉しくなって心の中がキューンとする



「はいっアリガトウ御座いますっ」

「親父っもういいだろっどっか行けよっ」

「あぁはいはい・・じゃぁまた話そうな異世界のお姫さん」



そう言ってヒラヒラと手を振って風のように去って行く後姿を見つめ

視線を戻すモコナはまだお酒を飲みまくっている

ヒノエくんはふゥとため息を付くと私の手を掴んで空いた席に座らせた



「悪かったねあんな親父でさ」

「え・・ううんっ全然いい人だねっ」

「そうかな・・俺はアイツが苦手だ」

「・・苦手でもいいと思う・・でも家族が居るってコトは否定しちゃだめだよ」

「・・・姫君??」



そう家族が居るってことだけはどんなにやっても否定してはいけない・・だって・・

どんなに離れようとしても切れない因果の鎖のようだから・・





















「じゃぁ行ってらっしゃいヒノエくん」

「ゴメンな姫君初日から一緒に居られなくて」

「えっあぁっ気にしないでっ!!ヒノエくんはお仕事頑張って来てねっ」

「あぁ速く帰ってこれるようにするから」

「うんっ」



笑顔を作って手を振ると少し不満そうに笑顔を作り小さく手を振り替えしてくれた

縁側で行ってしまうヒノエくんを見送る

モコナはあまりの飲みすぎで酔って気持ち悪くなったらしくんーんーといいながら私の部屋で寝ている

お手伝いさんが気を利かせてお茶を入れてきてくれたのでお礼を言って縁側に座った



「桜・・綺麗だなぁ」



今は丁度春らしく綺麗な花びらが宙を舞う

ふぅと息を吐いてそれを眺める

何でだろう・・こんなにゆっくりすることってあんまりなかったから凄く新鮮だ




「こんにちわ」

「え・・あ・・こ・・こんにちわ」

「そんなに警戒しないで下さい僕もココの人間です」

「え・・あぁ別に警戒はしてません」



ニッコリ笑う優しそうな人がいつの間にか隣に立っていた

綺麗な長い黄土色の髪を縛って黒い布を被っている優しそうなヒノエくんよりは年上の男性だった



「ヒノエは・・居ますか??」

「あ・・今丁度出ていてすぐ帰ってくると思いますが」

「そうですか・・じゃぁ少しココで待たせていただいても構いませんか??」

「あっ・・は・・はいっ」

「ふふふふ・・そんなにビクつかなくても取って食べたりしませんよ??」



クスクス笑いながら私の隣に座る

別にそんなつもりじゃないのだが・・何だかちょっと警戒してしまっているのかもしれない



「初めまして僕は武蔵坊弁慶といいます」

「・・え・・武蔵坊弁慶って・・義経のっっ」

「えぇ僕と九朗は友人ですが??・・九朗のお知り合いですか??」

「え・・あいや別に・・」

「そうですか??・・貴方のお名前も教えてほしいな」

「あ・・すいません名のらせておきながら・・私はといいます」

「苗字・・があるんですね」

「え・・あっえーと・・「もしかして異世界の方ですか??」



え・・どうして??と思いながらバッと顔を上げて彼を見る

やっぱりという顔で微笑む彼



「実は京にも同じように異世界からきた人達が居るんです」

は応龍の・・運命の神子なんだ』

「モコナ・・酔い大丈夫??」

「応龍というのは??」

は・・運命に選ばれた人間なんだよ白龍や黒龍と同じようにねぇ』



へぇと目を細める弁慶さん

私はん??という顔でモコナを見つめた

応龍・・詳しく聞いたことはなかったから・・凄く新鮮な言葉



「人の姫君に手出すなよおっさんっ」

『ヒノエーお帰りぃ』

「あ・・ヒ・・ヒノエくんお帰りっっ・・っておおおおおっおっさんはダメだよ弁慶さんまだお若いしっっ」

「ふふふふそうですよヒノエ男の嫉妬は見っとも無いですよ??」

「なら人の花に手出すお前はどうなんだよ??」

『うわぁ男の喧嘩だぁい!!混ぜて混ぜてっ』

「えっ・・あ・・ヒノエくん??弁慶さんとはお話していただけだよっっ!!!」


ズルッ



混乱して縁側から足を滑らせる

ピッカピカに磨かれた縁側は滑りやすく本当にズルッと顔か転びそうになった

ボスッ私の身体を弁慶さんの大きな腕が支える

少しホッとしたように微笑む弁慶さんのあまりの綺麗さに私はまた赤面した



バチッ

「っ!!!・・」

「あ・・ごごごごめんなさいっっ・・私私・・念力持ちでっ・・ごめんなさいっっ」

「いいえいんですよ・・これでも僕頑丈な体してますから気になさらないで下さい」

「いいえっそんな訳にはいきませんっ手赤くなってますっ私が怪我させてしまった以上っ責任を取ります」

『え・・―どしたのぉ??』

「え??姫君??」

「お手伝いさんに氷袋貰ってきますからっ動かないで下さいねっ絶対ですよっ」












さんが走っていってしまった後

ヒノエは彼女が僕のために走っていたのが気に食わないらしく不機嫌な顔でいた



『いっちゃったぁ場所解るのかなぁ??』

「彼女はもともとココに居たって訳ではないんですね」

「異世界のコト聞いたのかよ??」

「はい京にも2人白龍の神子と八葉が居ます・・でも来てから少しの時が流れました」

とモコナは昨日来たんだよ!!』

「京にもか・・あまり俺はそいつ等と姫君を会わせる事は気が進まないね」

「どうしてですか??」

は・・向こうの世界であんまりいい生活を送ってないみたいだったからさ」



ヒノエは走っていった彼女の方をジーっと見ながら少し切なそうな顔をした



『でも・・いつかは会うことになるよヒノエ』

「あぁ知ってる解ってるさ・・で??アンタは態々その話をしにきたのかい??」

「いえ八葉として・・旅に付き合う意思があるか聞きに来たのもあります」

「・・・・俺は姫君がついて行くと言えば行くよ」

「彼女のコト随分信頼しているんですね」

「信頼じゃない守ると誓ったそれだけさ」


「氷袋貰ってきましたっっ」



はぁはぁと息を吐きながら僕のほうへずぃとそれを突き出してくる彼女

僕のために走ってきてくれたというと少し嬉しくなる

少し赤みかかった手につめたい感触



『お帰りぃ』

「うんただいまぁ・・・・・・・・すいません・・・本当に助けていただいておりながら」

「いいえ僕が勝手にやった事です」

「・・念力の力を抑えきれない私の努力の無さですっっだから誤らないでくださいっっ」

「・・貴方は本当に強い人ですね自分の失敗を反省し続けるなんて僕には出来ません」

「・・・・・・・・ただ悪あがきをする子供なだけです・・私はいつも人を傷つけることしか出来ないから・・」



そう言った彼女の顔はまた寂しそうにしていた

ヒノエが物凄い目で睨んでいる・・僕はクスクスと笑いながら彼女の頭に手を置いた

綺麗な灰色の髪が僕の手をすり抜けていく



「そんな事はありません貴方は今僕の傷を癒そうとしてくれている・・それは確かなんですから」



下向きで・・でも嬉しそうに笑った君の笑顔に僕はまた癒される



「おいっ手出すなつっただろうがっ」

「・・ヒヒヒノエくんっっ苦しいっっ」

「あ・・ゴメン姫君大丈夫か??」

「え・・あぁっ大丈夫大丈夫っヒノエくんは心配しすぎだよっ私そんなにひ弱じゃないってっっ」



心配そうなヒノエに笑顔を見せる彼女

・・その光景に少しだけ嫉妬した僕に正直驚いた・・こんな短時間で彼女に情が移ってしまったのだろうか??

僕もまだ人間らしい気持ちがあったのだなと笑いが漏れる



「じゃぁ僕はそろそろ」

「え・・あ・・そ・・そうですよね・・行ってしまわれるんですよね・・やっぱり」

「・・ふふふふ大丈夫ですよすぐまた会いに来ますから」

「はぁ??アンタすぐってまた来んのかよ??」

「えぇ僕もこの可愛らしい神子様に興味が沸きましたから」

「・・てめっ1回落ちて来いっっ」



拳を作るヒノエを抑えるさん

そんな姿も愛らしくて僕はまた笑顔を作る

・・・・・それにしても・・帰って欲しくないと言われた時は僕も流石に驚いたし嬉しい気持ちに苛まれた



「あ・・そうだ弁慶さん」

「はい??」

「これ・・金平糖です向こうの世界からのですけど良かったら」

「アリガトウ御座います甘いものは頭の回転をよくしますからありがたく頂いていきます」

「・・今日は本当にゴメンなさい・・それと・・ぁりがとぅ」

「え??」

「強い人なんて言われたの初めてだから・・・・本当に嬉しかった」



へらっと笑う彼女に僕は目を見開いた

そしてまた笑顔に戻る・・彼女に今日会ってから僕は驚いてばかりだな・・

そう思いながら馬に乗る

入り口まで送ってそこで別れた・・ヒノエは相変わらず気にくわなそうな顔だ





「行っちゃったね・・また会えるといいなぁ」

「妬けるねそんなにアイツが気に入ったかい??」

「ち・・違うよっ!!・・こっちの世界に来て2人目の知り合いになれた人だから・・」

??」

「ううん何でもないっ・・そうだヒノエくんっ」

「何かな??」

「お庭の桜がとっても綺麗だったのっ・・お茶とお菓子もあるから一緒に食べ・・ていい??」


「・・姫君にしては積極的だね・・聞くまでも無いさいいよ姫君の逢瀬のままに」



今日も・・いい日であるように

少しずつ自分を変える努力を・・